宇宙へのミッション:異なる重力下での免疫細胞

From deep sea to outer space
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チューリッヒ大学のティール博士とウルリッヒ教授は、免疫細胞を探索ロケットで大気圏に打ち上げ、遺伝子発現の変化を見る調査実験を行ないました。彼らは、長期間の宇宙飛行が宇宙飛行士の健康に与えるダメージの治療法の開発に挑戦しています。
エスレンジ宇宙センターを訪問
長期の宇宙飛行は、生体の免疫システムに影響を与えるため、人類が大気圏を越えてさらに遠くまで飛行するには限度があります。このテーマの研究のため、コーラ・ティール博士とオリバー・ウルリッヒ教授は、スウェーデン北部キルナのエスレンジ宇宙センターで最先端の実験に取り組みました。

QIAGENのシニアグローバル・プロダクトマネージャー、レギーネ・ストール(理学博士)は、QIAGEN RNeasy Kitsがこの最先端の研究にどのような役割を果たしているのかを見学するために、ロケット打ち上げ直前の研究チームを訪ねてキルナへ向かいました。レギーネは、「ロケットの打ち上げを見ることは、日常とはかけ離れた別世界で、まるでSF映画を見るようでした。また、私達の製品がこのようなとても興味深い研究で実際に使用されているのを間近に見れるのは、とてもエキサイティングな経験でした。」と話しています。

完璧を期する打ち上げまでの準備
研究チームが行なったロケット準備の様子をティール博士に詳しく説明していただきました。
4~6ヶ月に渡る綿密なプランニングの後、研究チームはキルナへ到着。飛行機のタラップから降り立つと、そこは静寂のただよう極寒の地で、全くの別世界でした。満点の星空は、初めて見る星で一杯です。空港から目的地までの最後の道のりは、凍りついた真っ暗な道を40 km走るという、たいへん危険なドライブでした。
ようやく宇宙センターに到達すると、休む間もなく、ただちに実験場のセッティングと、今回の無重力下での実験の鍵となるリンパ球を培養するため、夜を徹しての作業が始まりました。

これから数週間、研究者が起きている間はひたすら、大容量の細胞の管理、ランニングテスト、機器設定や消耗品の補充や在庫管理などに時間が費やされます。打ち上げの時まで細胞を完全な状態に保つため、3人一組になり、2組交代のシフトで24時間体制の管理を続けます。
また、打ち上げの日が近づいてくると、錆びついた発射台でロケットの組み立ても始まりました。発射台は、ロケット打ち上げの際に発生する酸蒸気のために酸化してしまうのです。

研究チームは、ロケット組み立て完了後も、定位置についたロケットと最高のコンディションに保たれた細胞とともに、打ち上げに最適な天候を待たなければなりません。
ロケットの着地点を予測し、地域の人々の安全を図るためには、風向きも考慮しなければなりません。トナカイの群れがどこに居るのかさえ、よく確認する必要があるのだと、とティール博士は語りました。
チームにとって緊張の毎日が続きますが、北欧の日光を浴びながら森の中をジョギングしたり、チューリッヒの伝統的な春祭りを楽しんだりして、“その日” が来るのを待ちます。

いよいよ打ち上げ
ロケット打ち上げの3時間前に、3つのシリンジに封入された細胞と培地、そしてRNA保存試薬が含まれた35個のモジュールが、ロケット内にしっかりと固定された自動オペレーティングシステムにセットされました。全員が安全なバンカーへと移動し、ついに、“no return(発射)” のボタンが押されました。
ロケットは、高度260 kmに達し、貴重な細胞が積まれた貨物が、6分間の微小重力環境にさらされます。細胞の懸濁した培地は、RNA保存試薬のモジュールに、リモート操作で順次に注入されます。いかなる遺伝子発現の変化でもすべて記録するために、この操作は飛行の間中、続けられます。ロケットが帰還し、急下降を始めると、GPSで着地点が追跡されます。いよいよロケットからモジュールを運びだし、RNeasy Midi Kitを用いてRNAを抽出する作業が始まります。

実験装置が搬出されるとすぐにサンプル処理が始められました。ティール博士は、「実験開始からサンプルをチューリッヒに持ち帰るまで、私達は、RNA分離が100%成功すると信じ続けました。4週間、ゆっくり休む間もなく緊張も続き、チームの疲労はピークでしたが、実験装置を解体しチューリッヒへ搬送する作業をやっとの思いで終えました。通常なら数週間かかる作業を私たちは2日で終わらせることができました。」と話しています。
研究チームは、チューリッヒに戻るとすぐに、マイクロアレイ解析を用いて、どの免疫細胞が重力変化に反応するのかという研究を始めました。さて、彼らの努力が報われ、どのような発見がされるのでしょうか。この研究の成果が、宇宙飛行の未来を変えることになるのか、私達は期待を込めて見守りたいと思います。

以下のリンクから、RNeasy Midi Kitの詳細、研究ニーズに最適な製品検索用ツールにアクセスできます。また、皆様の研究事例についてもお聞かせください。

参考文献
Thiel, S. C., et al. (2015) Identification of reference genes in human myelomonocytic cells for gene expression studies in altered gravity. BioMed Research International.

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