RNA isolation tips
マイクロバイオーム

RNA分離のヒント

土壌から高品質のRNAを分離

土壌からのRNAの分離は、環境 分子生物学におけるもっとも困難なアプリケーションの1つです。常に分解の問題があるだけでなく、RNA収量も少ない傾向にあります。

土壌中のフミン酸と阻害物質によるRNAの複合汚染の可能性も課題です。RNAアプリケーションでは純度が重要です。阻害物質が含まれない高濃度のRNAを反応液に入れなければなりません。

RNA収量がDNA収量の10%~20%程度と低い場合、研究用サンプルを分離するためには、より多くのサンプルとより大容量のチューブ(15 ml)と遠心分離機が必要になります。低コピー遺伝子を対象とする場合は逆転写RNAの希釈は避けた方がよいことから、阻害物質を確実に除去することが鍵となります。

土壌からのRNA抽出を簡易化する目的で開発された QIAGEN®RNeasy® PowerSoil® Total RNA Kitなら、この課題に対処できます。 

プロトコールは慎重にテストされた一連の手法で構成されます。それらは、阻害物質を除去するInhibitor Removal Technology(IRT®)、完全な微生物溶解を可能にするフェノール・クロロホルム抽出、高品質の精製を実現する陰イオン交換カラムです。最終的に、必要量のクリーンなRNAを分離してRT-PCRに最大限使用できます。

ローム質の森林土壌から河川堆積物まで、土壌はそれぞれに手触り、水分量、および微生物含有量が異なります。RNeasy PowerSoil Total RNA Kitを使用することで、それぞれの土壌に合わせた抽出プロセスをおこなうことができます。

RNA分離のための10のヒント

RNeasy PowerSoil Total RNA Kitプロトコールの手順に従って、RNA分離の課題を克服して最適な結果を得るための10のヒントについて考察します。

Protocol step
ヒント1: スタートサンプルの量を慎重に検討する。

大半の土壌でサンプル当たりの最大重量は2 gです。ただし、堆積物は水分の含有量が多いため、2 gのサンプルに含まれる土壌粒子は少なくなります。その結果、サンプルの微生物含有量が少ない場合は、RNA収量が減少する可能性があります。したがって、堆積物サンプルは湿重量で最大5 gとすることをお勧めします。

注釈: 採取後に、土壌の表面に大量の水分が見られる場合は、ビーズチューブにサンプルを入れて軽く遠心分離し、余分な水分を除去します。

Protocol step
ヒント2: 土壌に適したPCIを使用する

適切な比率のフェノール:クロロフォルム:イソアミルアルコール(PCI)を使用することが重要です ― 本キットのマニュアルに記載された推奨事項を確認してください。フェノール、クロロホルム、PCIの混合比は25:24:1とし、溶液のpHは6.7~8.0とします。混合液は TEバッファー(pH 8.0)に保存します。最良の結果を得るため、動物組織や細胞サンプルのRNA調製には低pHのフェノールが適していますが、土壌サンプルは中性のフェノールを使用します。

Protocol step
ヒント3: 最適なイソプロパノール沈殿を行う。

PCI抽出およびSR3溶液への添加後、イソプロパノール沈殿により全核酸を分離します。堆積物の場合は、SR3溶液を添加するとサンプル量が5 mlを超えることがあります。完全に沈殿させるには、プロトコール手順11でサンプル量に等しくなるようにSR4(イソプロパノール)を増量する必要があります。

ヒント4: 高塩濃度サンプルに合わせたイソプロパノール沈殿温度を調整します。

標準的なキットのプロトコールは -20℃でサンプルを凍結させます。しかし、高塩濃度サンプルは氷点下で塩分が析出して精製における陰イオン交換カラムとの結合条件が変わることから、室温での沈殿が適しています。サンプルから塩分が析出したかはペレットの外観を見ると分かります。通常のRNAペレットのように表面が平らで艶があるのではなく、粒が大きくて表面が硬ければ塩分が含まれています。堆積物サンプルは過剰に水分を含んでいるため、淡水湖から採取したものでも塩分濃度が高い傾向にあります。

ポイント: 一部の土壌は、手順12でインキュベート時間を30分以上、場合によっては一晩まで延長しても結果が損われません。最初に手持ちの土壌サンプルで確かめてください。

Protocol step
ヒント5: 適切なカラム流量で行う。

RNAの最終精製に使用するカラムは樹脂が充填されており、サンプルは重力によってカラムを通過します。樹脂が押し固められて、サンプルの通過が遅くなることがあります。陰イオン交換カラムに優しく力を加えると、バッファーの流量が増加してサンプルが通過しやすくなります。

注釈: それでもなお流量の調整が難しい場合には、5 mlシリンジのシリンジとバレルを使用して、カラムに軽く圧力を加えて流量を高めてください。その際、シリンジのバレルの端をカラム開口部にぴったりとくっつけます。カラムの上部から空気が漏れないようにバレルをしっかりと支えて、シリンジにプランジャーを押し込みます。流量が1秒あたり1滴を超えないように優しく力を加えます。

ヒント6: 成分を十分に混合する。

イソプロパノールを含む溶液は、棚に保管している間に分離することがあります。使用前にSR5とSR6を振とうして均一になるようにします。通常は10秒間の振とうで十分です。

Protocol steps
ヒント7: 溶出時間を短縮する。

ラボで本キットの使用経験がある場合は、15 mlではなく2 mlの採取チューブに直接溶出させることで時間の短縮が可能です。これによりトランスファーの手順が省略化され、プラスチックごみを削減できます。この方法を利用する場合は、重力カラムをラック内の採取チューブにバランスよく固定してください。

Protocol step
ヒント8: 適切な温度で最終のイソプロパノール沈殿を行う。

重力カラムから溶出後、再度、イソプロパノール(溶液SR4)を使用して最終沈殿を行い、-20℃でインキュベートします。室温ではなく、-20℃で行うことが重要です。

ポイント: 時間内に調製を終えることができない場合は、この段階で数時間または一晩、作業を中断することができます。サンプルを-20℃で凍結させると、RNAが安定化します。

Protocol step
ヒント9: RNAペレットの状態を観察する。

遠心分離してイソプロパノールから回収したRNAペレットは、通常、粒が小さくガラス様です。必ず、チューブは遠心分離機の方に向けてください。こうすることで、イソプロパノールを移し替える際にチューブ全体を見てペレットの位置を迅速に特定できます。

注: 組織培養フードのスイッチをオンにして、その吸気口のリントフリーペーパーにチューブを(上下逆さにして)のせると、ペレットの乾燥時間を短縮できます。

Protocol step
ヒント10: RNAを再懸濁する水の量に注意する。

ペレットを乾燥させたら、逆転写に必要な量のRNAを再懸濁させます。たとえば、微生物量が多い土壌の場合は、50~100 ulの水で再懸濁します。(最終濃度は100~200 ng/ulになります)。微生物量が少ない堆積物や乾燥土壌の場合は、水の量を25 ulにするとより高濃度のRNAが得られます。本手順では、ペレットの再懸濁に使用する水の量を自由に決めることができます。

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