プラスミドの宇宙飛行

From deep sea to outer space
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DNAが宇宙空間でも損傷なく無事である限界はあるのでしょうか?このテーマを研究するチューリッヒ大学のコラ・ティール博士とオリバー・ウルリッヒ教授が行なった調査実験をご紹介します。 観測ロケットの外部にプラスミドDNAを取り付け、宇宙空間へ打ち上げるという実験の結果、DNAが非常に過酷な環境下でも化学的性質を保ったままであることがわかりました。ティール博士は、「弾道飛行で地上に戻ってきた後のDNAが、損傷なく機能的であったことに、たいへん驚いている」と語っています。"
エスレンジ宇宙センターからの探索ロケット打ち上げの様子
打ち上げ準備
この実験は、宇宙研究の主要な研究施設の一つ、スウェーデン・キルナのエスレンジ宇宙センターで行なわれました。10月から5月までの冬のシーズンは、湖が凍結し観光客も少ないため、ロケットの打ち上げ・着地の実験を安全に行なうためには理想的なロケーションとなります。

数か月にわたり集中した準備が進められる中、QIAGEN Plasmid Maxi Kitで精製したプラスミドDNAを用いて、蛍光マーカーと抗生物質耐性遺伝子を含む人工プラスミドDNA(pEGFP-C3)カセットが作製されました。ティール博士は細心の注意をはらいながら、このDNAを観測用ロケット外部の様々な箇所にしっかりと装着しました。研究チームの期待が高まる中、ロケットが発射台にスタンバイされました。カウントダウンがスタートし、皆の緊張が頂点に達した時、ついにロケットは発射されました。ロケットが雲を突き抜け、高度268キロの大気圏外に達した時に、ようやく皆から、ほっと安堵のため息がもれました。

宇宙空間からの帰還
総飛行時間13分の間に、ロケットの内部温度は130℃に上昇し、外気ガスの温度は、1000℃以上にも達すると推定されました。隕石が大気圏に再突入する際に受ける過酷な条件をシミュレートすると、この宇宙飛行の間に、極小のプラスミドは、微小重力、真空状態におかれ、また放射線にも曝露したことになります。
ロケットが地球へ戻ってくると、ただちにGPSで着地点を探し出し、プラスミドDNAカセットを回収し、残留したDNAを精製しなければなりません。驚くべきことに、取り付けたDNAの53%がスクリューヘッドの溝から回収でき、さらにその内の35%は完全な生物学的機能を有していることが明らかになりました。さらに、そのDNAは、耐性菌や蛍光真核細胞を作るための遺伝情報を伝達するのに十分であり、損傷を受けていなかったのです。「DNAの遺伝情報は、宇宙空間での過酷な条件下でも、また大気圏への再突入という衝撃を経ても、基本的に無事であることを、今回の実験で初めて証明することができた」とウルリッヒ教授は解説しました。

未知への探索
この注目すべき調査実験によって、DNAが、そしておそらく他のバイオマーカーもが、予想されていたよりもずっと堅牢であるということが明らかになりました。ウルリッヒ教授は次のように述べています。 「あらゆる予防措置をとっていたとしても、宇宙船が地球上のDNAを宇宙へ伝播させてしまう可能性があることを、この実験の結果は私達に教えてくれた。地球外生命の探索は、このことをしっかりと踏まえて進められなければらない。」 宇宙生命の可能性に新しい知見をもたらすため、DNAの研究を続けるウルリッヒ教授と研究チームは、今後、さらに重要なテーマとなる、惑星探索による宇宙空間の汚染を防ぐための対策について注力していきます。

今回の実験に使用されたQIAGEN Plasmid Maxi Kit などのプラスミド精製キットや、プラスミド関連情報について、下記リンクよりご紹介しています。
皆様のご研究に最適な情報がきっと見つかることと思います。
 
参考文献
Thiel, S. C., Tauber, S., Schütte, A., Schmitz, B., Nuesse, H ., Moeller, R., Ullrich , O. (2014) Functional activity of plasmid DNA after entry into the atmosphere of Earth investigated by a new biomarker stability assay for ballistic spaceflight experiments.PLOS doi: 10.1371/journal.pone.0112979.

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