古代人の歯から新たな知見を

From deep sea to outer space
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歯が抜け落ちる原因ともなる歯周病は、罹患率の非常に高い深刻な口腔疾患です。オクラホマ大学のクリスティーナ・ワーリナー博士とその研究チームは、口腔マイクロバイオ―ムの進化の詳細や、歯周病などの疾病の原因となるその歴史的な役割を解明する研究を続けています。
私達の体の内外には、人体の細胞数よりも多くの細菌が生息しています。この複雑な微生物コミュニティは、今日では私たちの健康と疾病を左右する基幹的な役割を担うマイクロバイオーム(細菌叢)として知られています。口腔マイクロバイオームは、人類とともにどのように進化してきたのでしょうか。何百年も遡って、古代人の口の中を詳細に調べることで、さまざまなことが明らかになってきました。

歯周病は、ほぼすべての成人が一度は罹患すると言われるほど一般的な口腔疾患です。しかし、人間がその疾患にどのようにして罹患するようになったのか、食生活や環境、文化などの要因がどのように関与しているのかということに焦点をあてた研究は、ごくわずかしかありません。クリスティーナ・ワーリナー博士とその研究チームは、世界各地の博物館のコレクションや古代遺跡から見つかった、古代人の歯に沈着している歯垢(プラーク)から、新たな知見を “発掘する” 研究を続けています。古生物ゲノム研究者にとっては幸いなことに、粘着性のプラークは石灰化し、それが化石となって発掘されるため、数千年もの時を経た今も、口腔内のDNA などの生体分子を含むすべてが歯とともに温存されています。その生体分子の豊富な情報源によって、病原体の活動と進化の詳細な記録が提供され、過去と現在で共通の疾患についても理解を深めることが可能なのです。

ワーリナー博士の研究チームは、QIAGEN のMinElute PCR Purification Kit と次世代ショットガン ・ シークエンシング法を用いて、古代マイクロバイオームの生態系と機能について、世界ではじめての詳細な研究を行ないました。

博士は、次のように語っています。 “古代のゲノム研究において、実験効率がよいことと、完全DNA-freeのカラムや試薬を使うことは必須の条件です。私たちは、シリカカラムとバッファーだけが含まれているMinElute PCR Purification Kit が、古代DNAサンプルの実験には最適なキットだと考えており、たいへん信頼して用いています。”

研究チームは、現代の歯周病の歯垢サンプルと、中世のドイツの墓地から見つかった軽度に歯周病の兆候がみられるものから重度の歯周病までの歯垢サンプルとを比較しました。
驚くべきことに、古代と現代とでは、生活様式や衛生面、食生活などの明らかな違いがあるにもかかわらず、歯周病を引き起こす原因となる病原菌が非常に類似していることが明らかになりました。さらに研究チームは、ヒトの口腔マイクロバイオームが、種々の疾病の原因となる微生物を長期にわたり保菌する役割を担っており、また、既知の抗生物質耐性遺伝子もその中に潜んでいることを世界で初めて明らかにしました。

歯垢は、マイクロバイオームの進化を研究する重要な情報源であり、現代医学、マイクロバイオーム研究、考古学、人類進化の研究において、貴重な洞察をもたらす可能性があることが研究チームによって明らかにされました。

古代人の腸内細菌の研究をはじめ、この他にもさまざまな興味深い研究が進められています。詳細はこちらのウェブページ でご紹介しています。 また、弊社のMinElute PCR Purification Kit についての詳細は、以下をご覧ください。