トランスフェクションプロトコールとアプリケーション

S_0120_TF
トランスフェクション成功のためのプロトコール、アプリケーション、役立つ情報
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トランスフェクション(DNAまたはRNAの真核細胞への導入)は遺伝子発現の研究や制御に使用される強力なツールです。クローニングした遺伝子を細胞にトランスフェクトして、生化学的特性解析、突然変異解析、細胞増殖に及ぼす遺伝子発現効果の研究、遺伝子調節因子の検討、および特定タンパク質の産生に使用することができます。RNAトランスフェクションは、タンパク質発現を誘導するため、あるいはアンチセンスやRNA干渉(RNAi)の手法を用いて発現を抑制するために用いられます。

それぞれに必要な要素を備えたベクターを用い、異なる実験用途に適した、トランジェント(一過的)とステイブル(安定的)の2種類のトランスフェクション法があります。

トランスフェクションのタイプ

トランジェントトランスフェクション

細胞にプラスミドを一過的にトランスフェクトすると、DNAは細胞の核に導入されますが、染色体には取り込まれません。つまり、目的遺伝子のコピーが多く存在し、高レベルのタンパク質発現をもたらします。トランスフェクトした遺伝子の転写は、使用したコンストラクトにより異なりますが、DNA導入後24~96時間で解析することができます。スーパーコイルのプラスミドDNAを使用した場合に、トランジェントトランスフェクションは最も効率的です。miRNA、siRNA、mRNAはトランジェントトランスフェクションに用いられ、核に導入される必要はなく、細胞質内で効力があります。

ステイブルトランスフェクション

安定的または永久的なトランスフェクションでは、トランスフェクトしたDNAは染色体DNAに組み込まれるか、エピソームとして存在します。プラスミドDNAがゲノムに安定して組み込まれることはまれです。抗生物質耐性遺伝子を担持する第二のプラスミドとのコトランスフェクションによって、あるいは目的遺伝子と同じベクター上で耐性遺伝子を提供することによって、安定的にトランスフェクトされた細胞を選択できます。siRNAおよびmiRNAは、選択的DNAベクターから産生された短いヘアピン転写物として導入されたときにのみ安定にトランスフェクトすることができます。しかし、RNA分子自体をステイブルトランスフェクションに使用することはできません。

スーパーコイルDNAと比較すると、線状DNAは細胞によるDNA取り込みが低下しますが、宿主ゲノムへの最適なDNA取り込みをもたらします。目的DNAを良好に組み込んだ細胞、またはエピソームとしてプラスミドDNAを保持している細胞は、選択マーカーを用いて識別できます。汎用されている選択マーカーには、アミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ(APH; neoR 遺伝子)またはハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ(HPH)をコードする遺伝子があります。他にアデノシンデアミナーゼ(ADA)、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)、チミジンキナーゼ(TK)、またはキサンチン・グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(XGPRT;gpt 遺伝子)をコードする遺伝子などのマーカーを選択できます。

迅速なフォワードおよびリバーストランスフェクション

迅速なトランスフェクションでは細胞播種とトランスフェクションを同じ日に行ないます。DNAあるいはsiRNAを血清の入っていない培養液で希釈します。トランスフェクション試薬を希釈した核酸(NA)に添加し、試薬・NA複合体を作製します。細胞播種後、複合体を新しく播種した細胞に直接添加します。一方、従来のトランスフェクションでは、トランスフェクション24時間前に細胞を播種します。トランスフェクションの前日に、血清および抗生物質を含む培養液で細胞を播種し、通常の培養条件下でインキュベートします。次の日にDNAあるいはsiRNAを、血清を含まない培養液で希釈し、希釈したDNAまたはsiRNAにトランスフェクション試薬を直接添加し、試薬・NA複合体を作製します。複合体を細胞に添加する前に、複合体の形成中に細胞上の培養液を交換します(図 迅速なトランスフェクションおよびリバーストランスフェクション)。

通常のトランスフェクションあるいは迅速なトランスフェクションでは、まず細胞をプレートウェルに播種してから複合体を添加します。リバーストランスフェクションでは、プレートにまず核酸を、その後トランスフェクション試薬を添加します。複合体形成後、細胞をウェルに添加することから“リバーストランスフェクション”と呼ばれます(図 迅速なトランスフェクションおよびリバーストランスフェクションのステップ)。

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トランスフェクションを成功させるための一般的なガイドライン

トランスフェクションの成功には、多くの要因が影響しています。細胞株の健全性と生存率、使用する核酸の品質、トランスフェクション試薬、トランスフェクション時間、血清の有無などのすべてが関係しています。

細胞

細胞は、その細胞株の生存に必要とされる血清や増殖因子を添加した適切な培養液で増殖しなければなりません。汚染(例えば酵母やマイコプラズマなど)が疑われる細胞や培養液は使用しないでください。疑いがある場合は、汚染していない凍結ストックから細胞を再播種してください。重要な成分が欠けていると細胞増殖が阻害される可能性があるため、不安定な成分があれば培養液が新鮮であることを確認してください。インキュベーション条件は37℃、正しいCO2濃度(通常は5~10%)そして相対湿度を100%で一定に保ってください。

細胞株によって最適な培養条件は異なります。American Type Culture Collection [ATCC] ウェブサイトを参照ください。

血清

血清は多くの市販のトランスフェクション試薬を妨害する可能性があり、最適なパフォーマンスのために無血清条件が必須であるトランスフェクションプロトコールがあります。ご使用のプロトコールを必ず確認してください。

細胞集密度

目安として、細胞が40~80%の集密度の時にトランスフェクションを実施します。あまりにも細胞が少ないと、細胞間接触がなく増殖が進みません。細胞数が多すぎると接触阻害が起こり、外因性核酸を取り込みにくくなります。活発に分裂している細胞で、最高の結果が得られます。

継代

継代数を低く保ちます(<50)。さらに、一連の実験で使用する細胞の継代数が一致している必要があります。トランスフェクトする培養細胞が活発に分裂し、トランスフェクション前に生存率が少なくとも90%であるように常に確認してください。細胞の特性は、不死化細胞株で少しずつ変化し、継代を繰り返した後では細胞が同一のトランスフェクション条件に応答せず、発現結果が良好でないことがあります。

核酸の量

最適な核酸量は、核酸の種類、細胞数、培養皿/プレートのサイズ、および使用する細胞株に応じて、大きく変動します。

トランスフェクトする核酸の量を著しく増加しても、良好な結果が得られない場合があります。実際には、最初のトランスフェクションで満足な結果が得られた場合は、核酸の量を減らしてテストするべきです(最適な試薬と核酸の比は一定に保つ)。

場合によっては、様々な核酸濃度がトランスフェクションに適しているかもしれませんが、核酸濃度の範囲外では効率が著しく低下します。

核酸が少なすぎると、実験応答がなくなる可能性があります。逆に、核酸が多すぎると細胞に対して毒性が検証されることがあります。

トランスフェクション試薬の量

これは、使用するトランスフェクション試薬により異なり、慎重に最適化されなければなりません。

トランスフェクション複合体の形成と複合体のインキュベーション時間

ほとんどのトランスフェクション試薬では、最適なサイズのトランスフェクション複合体形成に最良な時間の枠があります。これは試薬の特性により異なりますが、通常5~30分間です。試薬に添付されている仕様書を参照してください。

一般的に、培養液を追加で添加したり培養液を交換する(試薬の毒性効果を最小限化するため)前に、トランスフェクション試薬を細胞と一定時間接触させておく必要があります。最適なトランスフェクション時間は、細胞株、トランスフェクション試薬、および使用する核酸により異なります。

細胞を播種してからトランスフェクション複合体を添加する従来のアプローチと比較して、トランスフェクション複合体が入ったウェルまたはプレート上に細胞を播種した場合、トランスフェクション効率が増加することがあります。さらに、リバーストランスフェクションプロトコールでの利点としては、細胞播種とトランスフェクションを同じ日に行なうことで実験のタイムラインを丸1日に短縮できます。

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DNAトランスフェクションのためのガイドライン

プラスミドDNAトランスフェクションの検討事項

DNAの品質はトランスフェクション実験の結果に強く影響を与えます。最高純度のプラスミドDNAをトランスフェクションに使用した際に、最良の結果が得られます。

リポ多糖(LPS)としても知られているエンドトキシンはグラム陰性菌(例;大腸菌)の細胞膜成分で、プラスミド調製の溶解ステップ中に放出され、しばしばプラスミドDNAと共に精製されます。プラスミドDNA中にエンドトキシンが存在すると、トランスフェクション効率が大幅に低下することがあります。これは初代細胞および感受性の高い細胞株において特に顕著です。エンドトキシンに対して感受性の高い細胞(例えば、初代細胞、浮遊細胞、および造血細胞)へのトランスフェクション、あるいは最高のトランスフェクション効率と最低限の細胞毒性を確保するためには、エンドトキシン除去用に特別にデザインされた市販キットを用いて精製したDNAの使用を推奨します。このようなキットは、最適なトランスフェクション結果を確実に得るために役立ちます。

トランスフェクションのために使用されるDNA分子の形状は、トランスフェクション効率に影響を与えます。トランジェントトランスフェクションはスーパーコイルプラスミドDNAを用いたときに最も効率的です。ステイブルトランスフェクションにおいて、細胞への取り込みがプラスミドDNAと比較して線状DNAは低くなりますが、宿主細胞ゲノムへは最適に導入されます。

細胞にトランスフェクトしたDNAの遺伝子産物が細胞に対して毒性がある場合は、その発現が細胞死という結果をもたらします。このような場合には、毒性の強い遺伝子産物の発現により細胞に生じる損傷を抑えるために、弱いプロモーターか誘導性プロモーターを使用することが必要になります。

トランスフェクションテクノロジーの選択

核酸トランスフェクションのための方法は、DEAE-デキストラン、リン酸カルシウム、エレクトロポレーション、リポソーム、非リポソーム脂質および活性化デンドリマーを用いて開発されてきました。どのトランスフェクションテクノロジーを選択するかにより、トランスフェクション効率は大きな影響を受けます。トランスフェクションは、高速かつ容易に行なえ、高い効率と再現性のある結果が得られ、細胞毒性が最小限であるのが理想です。

最適化の重要性

最良の結果と最も効率的なトランスフェクションのためには、トランスフェクション試薬とDNAの最適な比率を各細胞株とプラスミドの組み合わせで決定しなければなりません。したがって、新しい細胞株とプラスミドの組み合わせ毎に最適化試験を行なうことが重要です。

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RNAトランスフェクションのためのガイドライン

RNAのトランスフェクションは、siRNA(short interfering RNA)を用いたRNA干渉(RNAi)による遺伝子サイレンシングが発見されたことにより、極めて重要になってきています。

トランスフェクトするRNAの検討事項

mRNA、in vitro転写したRNA、ウイルスRNA、RNAオリゴ、siRNA、およびリボザイムなど様々な形態のRNAをトランスフェクションに使用できます。mRNAを使用する場合は、5 'キャップ、内部リボソーム侵入部位、またはポリAテールのような特徴の有無がトランスフェクション効率に重要な影響を与えます。

DNAやタンパク質が混入していない最高純度のRNAをトランスフェクションに使用した時に、最高のトランスフェクション結果が得られます。発現した遺伝子産物が細胞に対して毒性がある場合には、過剰発現が細胞死をもたらす可能性があると考えるべきです。

RNAi実験用にすぐに使用できる高純度なsiRNAは、いくつかの合成受託サービス会社から入手できます。効率的なサイレンシング効果を得るために、正しい配列を使用することが非常に重要です。必須遺伝子の発現を抑制することは、細胞死につながる可能性があることに注意してください。詳細はsiRNAトランスフェクションのガイドラインをご覧ください。

RNaseコンタミの回避

現在入手可能な精製法には、DNAがアガロースゲル上で見えない場合でも、精製したRNAが完全にDNAフリーであることを保証できるものはありません。RNAトランスフェクションには、RNaseフリーのDNaseまたは同等の方法で精製したRNAを処理することを推奨します。

リボヌクレアーゼ(RNase)は、機能するための補因子を通常は必要としない、非常に安定した活性な酵素です。RNaseは不活化することが困難であり、RNAを破壊するのに微量で十分なことから、プラスチック製品、ガラス製品や溶液は、RNaseコンタミを除去した後にのみ使用してください。トランスフェクション操作中に誤ってRNaseが混入しないように細心の注意を払う必要があります。RNAを取り扱う場合、RNaseフリーの環境を作り、維持するために、微生物学における適切な無菌操作法に従い、滅菌した使い捨てのプラスチックチューブの使用を推奨します。

最適化の重要性

RNAトランスフェクションで最良の結果を得るために、次の因子を最適化する必要があります:

  • トランスフェクション時点での細胞集密度
  • RNAとトランスフェクション試薬の比率
  • トランスフェクション複合物とのインキュベーション時間

使用する細胞種とRNAの各組み合わせに対してこれらのパラメーターを慎重に最適化することを推奨します。一度最適化した後に、同じ組み合わせの実験を行なう場合には、常に同じパラメーターの最適値を使用できます。

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siRNAトランスフェクションのガイドライン

哺乳類細胞へのRNA干渉(RNAi)の適用は機能ゲノミクス分野に革命をもたらしました。簡単、効率的、特異的に哺乳動物細胞における遺伝子の発現をダウンレギュレートする能力は、科学、ビジネス、治療面において巨大な可能性を秘めています。siRNAの効率的なトランスフェクションは効果的な遺伝子サイレンシングにとって重要です。

RNAi実験におけるオフターゲット効果

siRNAのトランスフェクションは、そのsiRNAが相同性のない遺伝子あるいは部分的にホモロジーを有する遺伝子に影響を与えるオフターゲット効果を引き起こすことが、研究で示唆されてきました。オフターゲット効果には、mRNA分解、翻訳の阻害、あるいはインターフェロン応答の誘導が含まれています(5~8)。オフターゲット効果のメカニズムは完全には理解されていません。これらは、標的mRNAと高い相同性を有するmRNAをターゲットにするsiRNAやmiRNAのように作用するsiRNA、あるいはsiRNA毒性に対する細胞応答によって引き起こされる可能性があります。さらに一部の研究者は、siRNAを介したインターフェロン応答を観察しました。

RNAi実験で誤解を生む結果になる可能性のあるオフターゲット効果を、低濃度のsiRNAを用いることにより大幅に回避できることを示している研究があります(9、10)。

siRNAトランスフェクションの最適化
siRNA濃度の計算

二本鎖siRNA(21 nt)の概算値:

  • 20 µM siRNAは約0.25 µg/µlに相当
  • siRNA(21 nt)の分子量は約13 ~ 15 µg/nmolに相当

付着細胞へのsiRNAトランスフェクションで最良の結果を得るためには、以下のパラメーターの最適化を推奨します。

siRNA量

使用するsiRNAの量は、トランスフェクションと遺伝子サイレンシングを効率的に行なうために非常に重要です。トランスフェクション試薬とsiRNAの比率は、新しいsiRNAと細胞の種類との組み合わせごとに最適化します。

トランスフェクション時の細胞集密度

トランスフェクションの最適な細胞集密度は新しい細胞の種類ごとに決定し、その後の実験ではその集密度を常に使用します。これは、従来のトランスフェクション用プロトコールを用いる場合には、細胞播種前に細胞数を測定し、細胞播種とトランスフェクションの間隔を一定にすることにより可能です。このことで、トランスフェクション時に細胞密度が高くなりすぎず、最適な生理条件の細胞を確保できます。

様々な培養プレートフォーマットに播種する細胞数のガイドラインは次の表に示しました; 付着細胞を播種する際の一般的な細胞数浮遊細胞やマクロファージ細胞を播種する際の一般的な細胞数初代細胞を播種する際の一般的な細胞数

付着細胞を播種する際の一般的な細胞数
培養用プレートフォーマット 迅速なトランスフェクションあるいはリバーストランスフェクション(トランスフェクション当日に播種) 従来のプロトコール(トランスフェクション前日に播種)
 384-well plate  4000–10,000  2000–5000
 96-well plate  1–5 x 104  0.5–3 x 104
 48-well plate  2–8 x 104  1–4 x 104
 24-well plate  0.4–1.6 x 105  2–8 x 104
 12-well plate  0.8–3 x 105  0.4–1.6 x 105
 6-well plate  1.5–6 x 105  0.8–3 x 105
 60 mm dish  0.3–1.2 x 106  1.5–6 x 105
 100 mm dish  2–4 x 106  1–2 x 106
 

浮遊細胞やマクロファージ細胞を播種する際の一般的な細胞数
培養用プレートフォーマット 推奨される細胞数
 96-well plate  3–6 x 104 suspension cells
 24-well plate  1–2 x 105 suspension cells
 96-well plate  1–6 x 104 macrophage cells
 24-well plate  0.4–2 x 105 macrophage cells
 96-well plate  3–6 x 103 differentiated macrophage cells
 24-well plate  1–2 x 104 differentiated macrophage cells
 

初代細胞を播種する際の一般的な細胞数
培養用プレートフォーマット 推奨される細胞数
 96-well plate  20,000
 48-well plate  40,000
 24-well plate  60,000
 12-well plate  120,000
 6-well plate  200,000
 

マルチウェル・プレートでのトランスフェクション — マスターミックスの調製

マルチウェル・プレートでトランスフェクションを行なう場合は、トランスフェクション複合体のマスターミックスを調製するか、トランスフェクション試薬と培養液(プロトコールにより異なる)のマスターミックスを調製してプレートウェルに分注します。

  • マスターミックスを調製する前に、各成分の必要量とトータル量を計算
  • ピペッティングの誤差を考慮して、必要な量の10%増しでマスターミックスを調製(例;48ウェルプレートでは、53ウェル分のマスターミックスを調製)
  • マスターミックスを分注するために連続分注ピペットを使用

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適切なRNAiコントロール実験

正確なデータ解析を行なうためには、適切なコントロール実験を実施することが重要です。以下のようなコントロール実験を推奨します。

ポジティブコントロールsiRNA

これは標的遺伝子を強くノックダウンする事が実証済みのsiRNAです。ポジティブコントロールは、トランスフェクション実験のセットアップおよびノックダウン解析が最適に行なわれたかどうかを確認するために用います。ある遺伝子をノックダウンし表現型への効果があるsiRNAは、表現型を調べるためのアッセイが適切に機能していることを確認するポジティブコントロールとしても使用できます。各RNAi実験においてポジティブコントロールsiRNAをトランスフェクトする必要があります。

ネガティブコントロールsiRNA

ネガティブコントロールsiRNAは、既知の哺乳動物遺伝子と相同性を持たないnonsilencing siRNAです。ネガティブコントロールsiRNAのトランスフェクションは、表現型や遺伝子発現の変化が非特異的であるかどうかを決定するために使用します。それぞれのRNAi実験においてネガティブコントロールsiRNAをトランスフェクトする必要があります。

トランスフェクションコントロールsiRNA

このコントロールは、トランスフェクション効率を測定するために使用します。トランスフェクション効率は様々な方法で測定することができます。例えば、蛍光標識siRNAのトランスフェクション後に蛍光顕微鏡を用いて、あるいは細胞生存に必須な遺伝子を標的にしたsiRNAをトランスフェションした後に細胞死のレベルを観察することにより可能です。siRNAトランスフェクション効率はできるだけ高くすべきです。このコントロールは、例えば新しい細胞株でのRNAi実験を確立する際の最適化に用います。

Mockトランスフェクションコントロール

Mockトランスフェクションコントロールの細胞はsiRNA を添加せずにトランスフェクション操作だけをおこないます(すなわちトランスフェクション試薬だけで細胞を処理する)。このコントロール実験は、トランスフェクション試薬あるいはトランスフェクション手法に起因する非特異的な影響を判定するために使用します。

未処理細胞コントロール

遺伝子の正常な基礎発現量を測定するために、トランスフェクション操作を実施しなかった細胞での遺伝子発現解析も行ないます。未処理細胞での結果は他の実験サンプルで得た結果との比較に使用できます。未処理細胞は各RNAi実験で解析されなくてはなりません。

表現型を確認するための追加のsiRNA

遺伝子のノックダウンに起因する表現型への影響は、同一mRNA上の異なる配列領域を標的にした2種類以上のsiRNAを用いて確認しなければなりません。

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miRNAトランスフェクションのガイドライン

microRNA(miRNA)は、siRNAに類似した特徴を持つ内因性の小さなRNA分子に分類されています。近年、発生、分化、アポトーシスなどの様々な生物学的プロセスにおいてmiRNAが重要な役割を果たすことが明らかになりました。特にmiRNA発現の制御ミスが数種類のがんおよびその他の疾病に関与していることが報告されています。

miRNAシステムは、生体内における遺伝子発現制御機構の一つです。成熟型miRNAは、主に翻訳を抑制することによって内因性遺伝子の制御に関与しています。さらに、迅速な脱アデニル化および/あるいはキャップ除去により、miRNAはmRNAの分解を引き起こします。自然界で起こるmiRNA結合部位は、主として標的mRNAの3'非翻訳領域(UTR)で発見されています。miRNAとmRNAが部分的にしか相補的でないため、真の結合部位の同定は非常に困難で不正確なものでした。

miRNA mimic あるいはmiRNA inhibitorのトランスフェクションは、標的遺伝子や特定のmiRNAの役割を同定するために使用される手法です。miRNA mimicは化学的に合成されたmiRNAで、細胞へのトランスフェクション後は内在性のmiRNAと同じ挙動を示します。miRNA inhibitorは、トランスフェクション後にmiRNA機能を特異的に阻害する一本鎖の修飾RNAです。miRNA mimicのトランスフェクション後に遺伝子発現が抑制されたり、miRNA inhibitorのトランスフェクション後に発現が増加すれば、研究中のmiRNAがその標的遺伝子の調節に関与していることの証拠になります。あるいは、様々なパスウェイにおけるmiRNAの役割は、miRNA mimicやmiRNA inhibitorのトランスフェクション後に特異的な表現型を調べることにより研究できます。

miRNA mimicあるいはinhibitorのトランスフェクション

24ウェルプレートを用いる場合には、細胞と複合体の最適な混和を確実に行なうために、まずウェルに細胞を播種した後に、mimic/inhibitorと試薬の複合体を添加することを推奨します。しかし、必要に応じて、複合体をまずウェルに添加した後に細胞を複合体の上に添加するリバーストランスフェクションを行なうことも可能です。リバーストランスフェクションは、プレートに添加する細胞と複合体の順番を変えるだけです。

しかしながら、96ウェルプレートを用いる場合にはリバーストランスフェクションを使用することを推奨します。リバーストランスフェクションは迅速かつ簡便で、ハイスループット・フォーマットで汎用されています。リバーストランスフェクションは、24ウェルフォーマットでのmiRNA MimicおよびmiRNA Inhibitorのコトランスフェクションにも最適です。

プラスミドDNAおよびmiRNA mimic/inhibitorのコトランスフェクション

多くのmiRNA実験は、miRNA mimic および/あるいはinhibitor と、luciferaseなどレポーター遺伝子にmiRNA結合部位が融合したプラスミドDNAベクターとのコトランスフェクションを必要とします。

miRNAトランスフェクションの最適化

標的遺伝子の効率的なダウンレギュレートまたはmiRNA機能の阻害に必要なmiRNA mimic/inhibitorの量は、miRNA、細胞株、および選択した解析方法によって大幅に変動します。最適な結果が得られる濃度を決定するために、様々なmimic/inhibitor濃度を用いて最適化実験を実施します。

miRNA mimicsは、わずか0.5 nMの最終濃度で標的タンパク質の発現を阻害することができます。しかし、タンパク質レベルでのダウンストリーム解析を実施する場合には、特により高い濃度が必要になることがあります。miRNA inhibitorsは、50nMの濃度でmiRNA機能を阻害することが示されました。より低い濃度のinhibitorでも効果があるかもしれません。

濃度の最適化に加えて、結果解析のためにトランスフェクション後の最適な時間を決定する経時実験も必要になります。miRNA mimicあるいはinhibitorの効果が、転写物またはタンパク質レベルにおいてすぐに変化をもたらさないことが頻繁にあります。

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適切なmiRNAコントロール実験

miRNA mimicあるいはinhibitorを用いた実験で得られた結果を正しく解釈するために、適切なコントロールの使用は必須です。それぞれの実験には、適切なポジティブおよびネガティブコントロールが含まれていなければなりません。結果の解釈やトラブルシューティングをするために、その他のコントロールが必要になる場合もあります。

miRNA mimic実験 — ポジティブコントロール

ポジティブコントロールmimicのトランスフェクションは、実験システムが予想通りに作動していることを確認するために使用できます(つまり、mimicが効率的にトランスフェクトされ、標的のダウンレギュレーションを引き起こす)。最適な結果が得られる濃度を決定するために、様々な濃度を用いるトランスフェクションの最適化実験にもこのコントロールを用いることができます。最適に条件が維持されていることを確認するため、miRNA mimicsを用いたそれぞれの実験でルーチン的にポジティブコントロールをトランスフェクトする必要があります。

miRNA mimic実験 — ネガティブコントロール

ネガティブコントロールを各実験でトランスフェクトすることにより、結果が非特異的であるかどうかが判断できます。ネガティブコントロールの結果と研究中のmiRNA mimic の結果を比較することにより、観察された結果が研究中のmiRNA mimic に特異的であることを確認することができます。ネガティブコントロールでの結果は未処理細胞での結果とも比較しなければなりません。遺伝子発現および表現型は、トランスフェクトしていない未処理細胞と、ネガティブコントロールsiRNAをトランスフェクトした細胞において類似していなければなりません。miRNA mimicおよびsiRNAは化学的に非常に類似しており、通常は配列のみが異なっているため、ネガティブコントロールsiRNAをネガティブコントロールmiRNA mimicとしても使用できます。

miRNA inhibitor実験 — ポジティブコントロール

miRNA inhibitorsのトランスフェクションを含む実験では、同じ標的遺伝子と相互作用する細胞内の他のmiRNAの存在によって阻害効果の検出が複雑になることが頻繁にあります。mimic単独のトランスフェクションと比較した場合、mimicとinhibitor のコトランスフェクションでは、発現が増加します。これは、inhibitor が効果的にmimicを阻害し、その結果、標的遺伝子のアップレギュレーションが生じるためです。

ダウンストリームの解析でレポーターベクターを使用する実験においては、ベクター、mimic、inhibitorすべてをコトランスフェクトし、並行してベクターとmimicをコトランスフェクトしなければなりません(図“miRNA mimic実験— ポジティブコントロール”)。ベクターとmimicのコトランスフェクションと比較した場合、ベクター、mimic、およびinhibitorのコトランスフェクションは発現の増加をもたらします。これは、inhibitor が効果的にmimicを阻害した結果、レポーターのアップレギュレーションが起こったことを立証しています。

miRNA inhibitor実験 — ネガティブコントロール

ネガティブコントロールを各inhibitor実験でトランスフェクトすることにより、結果が非特異的であるかどうかが判定できます。このコントロールのトランスフェクション後に得られた結果は、トランスフェクトしていない未処理細胞から得られた結果と類似したものでなければなりません。ネガティブコントロールの結果と研究中のinhibitor の結果を比較することにより、観察された結果が研究中のinhibitor に特異的であることを確認することができます。

ダウンストリームの解析でレポーターベクターを使用する実験においては、inhibitorネガティブコントロールとレポーターベクターのコトランスフェクションがネガティブコントロールになります。

トランスフェクションコントロール

最適な結果を得るために、トランスフェクション効率はできるだけ高くすべきです。新しい実験系あるいは新しい細胞株で実験を開始する際には、トランスフェクション実験を異なる条件下で繰り返し、最大のトランスフェクション効率を得るための最適条件を決定しなければなりません。ネガティブコントロールをトランスフェクトした細胞と比較した際に、細胞が最も死亡したトランスフェクション条件を最適な条件として、その後の実験に使用されます。このコントロールは最適化実験や新しい実験を開始する際に必ず実施し、それぞれの実験でルーチンのトランスフェクションコントロールとして使用できます。

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References

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