近年、カナダではキジオライチョウの保護に関心が高まっており、米国でも絶滅危惧種の保護問題の一つとして大きな議論がなされています。米国では、絶滅危惧種に指定し、さまざまな環境保護施策を進めるべきか、あるいはもっと穏やかな保護戦略を選ぶかを、2015 年9 月までに決定することになっています*。ご紹介するKrissy Bird 博士は、希少種鳥類の個体群の遺伝子的な研究方法を考察しました。その研究は、現在の生息環境を管理するために、さらには保護計画が成功しているかを長期的にモニターするために、たいへん意義のある洞察をもたらしています。
* 2016 年11 月現在、カナダでは絶滅危惧種指定されていますが、米国では指定されていません。米国の生息地は、米国西部の11 州にも渡り(67 万km²、日本国土の約2 倍)、土地資源の利用などの経済影響を考慮した結果、米国内務省により指定しないと決定されました。
生息数の減少
キジオライチョウは、米国西部とカナダ南部のアルバータ州とサスカチュワン州の半乾燥地帯にある、セージの生い茂る藪に多く生息しています。樹木のほとんどない、セージの茂みや野草、草むらだけの湿った牧草地が広がる平原で、独自のデリケートな生態系を構築しています。春の繁殖期になると、大変興味深い求愛行動が見られる繁殖場所が、小さなサイズで広域にわたり、まばらに形成されます。セージの草地の色に溶け込んでいる雌たちが、目的の雄を探し出すために、レックと呼ばれる集団求愛場に群がってきます。雄たちは雌の2 倍の大きさで、立派な尾羽を風を切って広げ、緑がかった黄色い胸の空気袋を膨らませて、ポコポコと独特な音をさせることで、彼らの縄張りを主張し、雌の気を引くためのアピールをします。雌たちは、その縄張りの中で一番優勢な雄と交尾した後、天敵から卵を守るために最も高く生い茂っているセージの茂みの中に産卵するのです。
非常に残念なことに、近年、キジオライチョウの生息地は、地域開発で破壊され、断片化が進んでいます。状況は年々悪化していることから、キジオライチョウは絶滅が危惧されているのです。生息数の急激な減少に注目したKrissy Bird 博士は、キジオライチョウの繁殖様式やアルバータ州の個体群の遺伝的な多様性に、生息地が失われることでどのような影響が現れるのか調査研究を行いました。Bird 博士は、まず初めに、希少なサンプルからでも高品質なDNA を十分に抽出する方法の検討に取り組みました。
Bird 博士は次のように説明しました。
「希少種の鳥の遺伝子サンプルを採取する手段としては、生え変わりで抜けた羽を利用することが主な選択肢でした。しかし、抜けた羽には、低品質のDNA がわずかしか含まれていなかったため、個体数の遺伝的解析用に十分なDNA 収量を得るためには、特別な追加実験を行う必要がありました。さまざまなDNA抽出方法を試行錯誤しました *。QIAGEN のDNeasy Blood & Tissue Kit を用いて、そのプロトコールの全工程を見直した結果、最も有効な方法を見つけることができました。この抜けた羽からのDNA 抽出のための改良プロトコールでは、標準的な値の60%から、99.6%にまで抽出効率を上げることができました。」
* 博士は、少量のサンプルからのDNA 抽出のために、数多くのDNA 抽出キットと従来法(フェノール/クロロホルム抽出など)を試験した結果、最も高品質なDNA を高収量で得られるのは、QIAGEN Kit であると確認しました。この情報については、Bird 博士の
ウェブサイト の
DNA Extraction Main Page をご参照ください。
答えを明らかにする
Bird 博士のキジオライチョウの保護に対する献身的な研究は、雄雌の選択と集団繁殖地での繁殖構造に関する新しい知見へとつながりました。博士の数年にわたる調査研究で、カナダ、アルバータ州のキジオライチョウが、限定された土地にごくわずかの生息数なのにもかかわらず、この州の範囲内で、驚くほど高レベルの遺伝的な多様性と関係性を維持していることが明らかになりました。
また博士は、おそらく雄の生息数が多いことで、予想以上に繁殖している北部モンタナ州に生息する集団からの高レベルの遺伝子の流動があることを観察しました。しかし、2013 年以降、実質的にアルバータ州のキジオライチョウは減少し続け、現在では、推定100 羽以下になっています。アルバータ州のキジオライチョウを保護するためには、遺伝子の多様性を鑑みるだけでは十分ではありませんが、生息地環境の改善や、集団間の関係性、集団の大きさなどを変更しながら、この多様性と組み合わせて考察することは、絶滅の危機を回避させる手助けになると考えられます。
貴重なサンプルからの高品質なDNA を簡単に精製するキットDNeasy Blood & Tissue Kit の詳細は、ページ以下のリンクからご覧ください。
またゲノム抽出に関してのご質問等は、
epromo-jp@qiagen.com までお問い合わせください。
References
Bird, K.L., Aldridge, C.L., Carpenter, J.E., Paszkowski, C.A., Boyce, M.S., Coltman, D.W. (2013) The secret sex lives of Sage-Grouse: Multiple paternity and intraspecific nest parasitism revealed through genetic analyses. Behavioral Ecology 24, 29.
Bird, K.L. et al. (2011) Living on the edge: population structure and genetic diversity of greater sage-grouse (Centrocercus urophasianus) in fragmented landscapes at the northern edge of their range. Conservation Genetics 12, 527.
Bush, K.L., Aldridge, C.L., Carpenter, J.E., Paszkowski, C.A., Boyce, M.S., Coltman, D.W. (2010) Birds of a feather do not always lek together: genetic diversity and kinship structure of greater sage-grouse (Centrocercus urophasianus) in Alberta. The Auk 127, 343.
Lavelle, M. (2015) Sage grouse war tests limits of partnership in West. Science 348, 1304.
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