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次世代シークエンシング

メタゲノムシークエンシング

微生物群を理解する

マイクロバイオームの研究は、私たちの生活や環境が細菌、真菌、古細菌、ウイルスからどのような影響を受けているかをより深く理解するのに役立ちます。かつてマイクロバイオーム研究は、微生物の世界を特徴付けるための微生物培養能力に限定されていました。

しかし、すべての微生物が培養できるとは限らず、また、人工的な純粋培養では微生物の特徴、挙動、および進化の道筋を定める他の種との相互作用が失われます。これは、シャーレで培養した微生物の遺伝子型と表現型が、自然界のものとは大きく異なる可能性がとても高いことを意味します(1)

微生物次世代シークエンシング(NSG)法では、私たちの内部で、外部で、そして周囲で生きている微生物に関する重要な遺伝子洞察を得ることができます。

メタゲノミクスまたはメタゲノムシークエンシングとは?

メタゲノミクス、またはコミュニティゲノミクスは、個々の種を分離したり培養したりしない、自然生活環境中にある微生物群の遺伝子解析であり、このような群における生化学的および代謝的相互作用への包括的な洞察を提供します。

メタゲノミクスはまた、事前分離を必要とせずに微生物の生息環境内にある個々の種の特定も可能にします。また、環境ストレス下での微生物の適応機構と、周囲に他の成分がある場合のコミュニティ内での相互作用を明らかにすることができます。

マイクロバイオーム研究のメタゲノミクス

現在、よく使われるメタゲノムシークエンシング法は3種類あります。全ゲノムショットガンシークエンシングは、細菌と共に細菌以外の微生物(真菌、ウイルスなど)を同時に調査することができますが (2)、シークエンシング予算が高くなります。または、16S/18S/ITSシークエンシングならターゲット領域だけに集中することができます。これは細菌系統学や分類学の調査に有用です(3)。群の遺伝子発現を調査するメタトランスクリプトミクスでは、代謝活動や宿主マイクロバイオーム相互作用などの動的洞察を提供し、WGSショットガンまたは16S/18S/ITSシークエンシングによる細菌群集の構成や潜在能力の静的なスナップショットを補完します。

さらに、メタゲノムシークエンシング法では、新たな生物(パンデミック初期のSARS-CoV-2など)のde novoゲノムアセンブリーを実現したり、既知の生物のゲノムを完了したり、高スループットシークエンシングの力を利用して何百という生物におけるゲノムを比較したりすることが可能です。

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現在の手法の限界

WGS、16S/18S/ITSやメタトランスクリプトミクスなどのメタゲノムシークエンシング法は、微生物群を研究する強力なツールを提供しますが、一定の限界もあります。

全ゲノムショットガンシークエンシングには非均一ゲノムカバレッジなどのバイアスの問題があり、微生物存在量の推量精度に影響します(4)

16S/18S/ITSシークエンシングにおける増幅ステップでは、リボソーム遺伝子のコピー数における差異によってバイアスが導入されたり、PCRアーチファクトが発生する可能性があり、これによって微生物存在量の解釈がゆがむことがあります (5)。さらに、16S/18S/ITSシークエンシングで使用されるユニバーサルプライマーは、すべてのターゲットシークエンスに同じようには合わないことがあるため、一部の分類群の検出が不完全になったり、偏ったりする可能性があります (6)

メタトランスクリプトミクスは、メリットはあるもののまだ複雑です。複雑な微生物群サンプルのRNA-seqを実行すると、感度の問題に直面するかもしれません。その結果、オンターゲットリードがなかったり、存在量の低いmRNA転写産物を捉えられなくなることがあります。これは、正しく実行するために何時間もかけてRNA-seqを最適化しなければならないことを意味します。この記事では、メタトランスクリプトミクス解析でRNA-seqリードを無駄にしない方法をまとめています。

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参考文献:
  1. National Research Council (US) Committee on Metagenomics: Challenges and Functional Applications. The New Science of Metagenomics: Revealing the Secrets of Our Microbial Planet. Washington (DC): National Academies Press (US); 2007.
  2. Jovel, J. et al. (2016) Characterization of the gut microbiome using 16S or shotgun metagenomics. Front Microbiol. 7, 459.
  3. Janda, J. M. and Abbott, S. L. (2007) 16s rRNA gene sequencing for bacterial identification in the diagnostic laboratory: pluses, perils, and pitfalls. Clin. Microbiol. 45(9), 2761–2764.
  4. Chouvarine, P., Wiehlmann, L., Losada, P., DeLuca, D., & Tümmler, B. (2016). Filtration and Normalization of Sequencing Read Data in Whole-Metagenome Shotgun Samples. PLoS ONE, 11.
  5. Khachatryan, L., Leeuw, R., Kraakman, M., Pappas, N., Raa, M., Mei, H., Knijff, P., & Laros, J. (2020). Taxonomic classification and abundance estimation using 16S and WGS-A comparison using controlled reference samples.. Forensic science international. Genetics, 46, 102257.
  6. Losada, P., Tümmler, B., Wiehlmann, L., & Chouvarine, P. (2014). Whole metagenome shotgun sequencing analysis of microbiome of cystic fibrosis- and COPD patients. European Respiratory Journal, 44, 1212.